相馬野馬追“出陣”【福島県南相馬市】


千年の刻を越え、五百余りの騎馬武者達がここに集う。

南相馬で行われる、『野馬追』を観るため、再び仙台経由で福島へと向かった。

僕の場合、車を持っていないので基本的に鉄道を利用した。


06:04発盛岡行きの東北新幹線『やまびこ』51号に乗り、仙台へ。
仙台からは常磐線に乗り換え、『亘理』駅で下車。

ここから発着する代行バスに『JRの切符のまま』乗り換える(乗り継ぐ)。




代行バスは震災により運休となった区間である、浜吉田から相馬駅を結ぶためのもので、現在常磐線は仙台方面から見ると、

仙台ー浜吉田
相馬ー原ノ町
広野ーいわき、水戸、上野方面

と3つに分断された形で復旧されている。
代行バスは国道6号線を南下し、かつて駅のあった場所から内陸の場所に同じ名前でバス停という形で運用している。

最初の駅である、『浜吉田』駅は2013年3月16日のダイヤ改正より再開。これにより代行バスの停留所は駅前ではなく、6号線に移動。

次の駅、『山下』駅は浜吉田との間の線路がすでに撤去済みであり、駅までバスは来ない。
6号線沿いにある、山元町役場に停留所が置かれている。

『坂元』駅は6号線、『新地』駅は新地町役場に停留所が置かれている。
この2つの駅は崩壊、流失してしまったため、駅前までバスが行くことは無い。


『駒ケ嶺』駅はバスの窓から見た限りでは損壊などは見られないようで、いずれこの場所で復旧が行われるらしい。

代行バスの時刻表、停留所について詳しくは下記をご覧下さい。

東日本旅客鉄道株式会社 仙台支社
http://www.jr-sendai.com/operation

次が代行バスの終点となる『相馬』駅だ。
亘理駅の(隣の)装飾にも驚かされたが、こちらも立派な駅舎だ。


バスを降りて、通りを見ると人で賑わっていた。
鎧兜、馬が見える。
相馬野馬追”の“出陣”が始まっているのだ!


始めに『野馬追』を観るため、と書いたが、当初の予定では、相馬駅から再び常磐線に乗り、2つ先の『原ノ町』駅で下車、その後駅の東側を進み、沿岸部を見て、一つ手前の『鹿島』駅に行くつもりだった。
『野馬追』の存在は知っていたけれど、その日程は全く知らず、てっきり秋くらいに行われるものなのだろうと想像していたら、実は今月末。
以前は毎年7月23、24、25日だったそうだが、2011年からは7月最終土曜日を開幕という事になったのだそうだ。

そんなわけで、急遽『野馬追』を観るため、原町の雲雀ヶ原にある祭場地を目指す事にした。
先ほどの“出陣”を見送った後、一足先に祭場のある『原ノ町』へ向かった。


原ノ町に着くと、そこには留置された車両がある。『651系』と『415系』だ。
651系は『スーパーひたち』などの常磐線特急として使われてい『た』。
現在の常磐線特急は2012年より運用開始された新型の『657系』に置き換わっている。
415系は現役だが、651系とともにここから南に帰る事もできず、このままでいる。

行き先(方向幕)は『上野』のまま。
仲間の元へ帰る事のできない姿は、とても切ない・・・。


原ノ町駅を出る。

駅前には案内所ができていたが、もう11時を回る割には人が少ない。
もしやすでに祭場で盛り上がっているのかと思って駅前の商店街を抜け、四つ角を南下したのだが、まるで盛り上がっている様子は無い。相馬駅前ですでに盛り上がっていたので、不安になりつつも祭場を目指す。


祭場地に着くと、まだどこの騎馬も集まっておらず、準備状態だった。

予定としては、午後1時半くらいには原ノ町駅に戻らなければならないのだが、案内所で聞いてみると全ての騎馬が集まるのは午後との事。それを聞いて行列を見るのもあきらめかけていたのだが、祭場から少し南に進んだ交差点で交通整理が始まっていたのを見て、小高方面からやってくる事が分かった。


しばらくすると、騎馬隊がやってきた!


馬を驚かせる事になるといけないので、歩道からは出ずに撮影はしていたものの、迫力は十二分に伝わって来る!

とにかくすごい数。皆とても良い表情をされている。
この日のために、きっと多くの努力をしてきたのだろう。


近くのガソリンスタンドで、給油ではなくて馬上の武士達にビール、馬には水を与えられるようになっていたが、戦国絵巻と現代がごちゃまぜな光景となっているのはなんともシュール。


この後、午後からは祭場にて式が行われ、競馬なども行われるとの事だった(観覧には要入場料)が、残念ながらもう移動しなければならない時間。名残惜しいが祭場を後にする。
歩兵隊は参加できるようなので、県外の人間でもよければ来年はそれを狙ってみようかな・・・。


相馬野馬追執行委員会公式ページ
http://www6.ocn.ne.jp/~nomaoi/index.htm


さて、原ノ町駅から仙台方面に乗り、『鹿島』駅を下車。
と、丁度通りで行列が行われているのが見えた。これから祭場へ向かうのだろうけれど、いくら馬の速度とはいえ、距離はあるので一帯全ての騎馬が集まるのは何時くらいになるのだろう?考えてみたら相馬駅での行列だって相当な距離があるはずだけれど。

この鹿島にやってきたのは、ここにもある、いわゆる『復興商店街』に行くためだ。
駅からは1キロ程度だろうか、そこにあるのが『かしま福幸商店街』だ。


かしま福幸商店街
http://www.kashima-shops.com/

ここにある『双葉食堂』に行ってみる事にしたのだが、結構並んでいて、入り口に置かれたノートに名前を書いて呼ばれるまで待つほどだった。

ここに立ち寄っていられるのはもう1時間を切ってしまっていたので、入れずに終わるかと思ったが、なんとか入る事ができた。でも、急いで食べないと駅に戻れない・・・。

そんな刻、たまたま相席になった方とお話を色々聞かせて頂いて、さらに相馬駅まで車で送ってもらえる事となった。

その節は本当にお世話になりました。震災当時の事なども聞けて本当に感謝しております。
まさに一期一会とはこの事を言うのでしょう・・・!

かしま福幸商店街で店員さんとも話をしてみたかったけれど、上記のような混雑ぶりだったのと、時間の都合であきらめた。
やはり祭りの日だからいつも以上に混んだりしていたのだろう。


相馬駅ではまだ代行バスまでの時間があるため、駅周辺を散策してみようかとも思ったのだが、駅近くの土産物屋は休業・・・。行きに見た行列の盛り上がりはすでに無く、静かになっていた。
雨も降って来ていたので、駅に戻る事にした。

代行バスは行きと同様のコースで亘理駅まで戻った。
行きでもそうだったが、仮設住宅への案内板をいくつかバスの窓から見えた。

前回亘理の復興商店街『ふるさと復興商店街』は仮設住宅内にあったため、間接的に仮設住宅を訪れた事にはなるが、一体いつになったら仮設住宅を必要とせずにいられる事になるのだろう・・・?

そういえば、途中商店『街』とまではいかないが、2、3店で集まった商店があったようだった。
『復興商店街』はネット上で検索すると、いくつもその名前が出て来て知名度があったりするのだが、そうやって知られる事もなく、ひっそりと経営を再開している方達もきっと多いのだろう。


仙台駅では、来月行われる七夕祭りの飾り、というか広告が天井からつり下げられていた。
その頃にも来てみたいが、さすがに連続で来られる予算は無い・・・。

駅では少し前にメール連絡を入れておいた友人と会い、お茶をのみ、今日の出来事などを話して時間を過ごしたが、あっという間に帰りの新幹線の時刻となってしまった。

また来よう!

(了)