犬吠埼(いぬぼうさき)【千葉県銚子市】


ヒガシノハテへ。

特急『わかしお』に乗って東京から千葉・銚子へ。


銚子に着くと、銚子電鉄に乗り換え。
銚子電鉄は、銚子~外川間の6.4キロを運行するローカル鉄道。

同じホームの先端から発車するのだが、『しおさい』の特急券を回収してもらうためと、まだ電車がやってこないため、時間稼ぎのためにいったん改札を出る。

銚子電鉄の切符はJRの券売機でも買えるのだが、一日乗降自由の『弧廻手形(こまわりてがた)』を使うことにする。
事前に購入方法は知っていたが、とりあえず駅員に方法を確認。
まずは入場券も何も買わずに改札を通り、駅の先端にある銚子電気鉄道の駅に向かう。
ここには券売機は無い。Suicaの簡易改札があるだけ。

やってきた電車。なんとも懐かしい顔。
元・京王の車輛である。

銚子電鉄と言えば、『ぬれ煎餅』が有名。
ではなぜ煎餅が有名なのかと言えば、数年前に銚子電鉄が経営危機に陥った時に、ホームページ上で
“電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです。”
“電車運行維持のためにぬれ煎餅を買って下さい! ”
というメッセージを発した事がネット上で話題となり、各地からぬれ煎餅の注文が殺到。
その売り上げにより赤字続きの窮地を乗り越えた事で有名になった。

赤字続きで廃線も免れられない、そんな時に元社長が借入金を横領した事など、さらに厳しい状況になっていたなど、波乱続きの路線。

窮地を乗り越えたとはいえ、余裕が無い事は現在も続いているようで、半分は無人駅、駅の設備はボロボロのままだったりする。
写真を撮る分には雰囲気のある良い素材だが、当事者とってはとても切ない事だろう。

まだ発車の時間ではないので、もうちょっと駅を散策。
そこへJRの普通電車が到着。
これまた懐かしい、というか、最近まで通勤に使っていた京浜東北線の車輛、209系。
カラーリングや内装は代えられているが、この四角い顔は京浜東北線だ。
懐かしいけれど、通勤ラッシュを思い出すと複雑な気分。

さて、そろそろ銚子電鉄の発車時間。
席に着くと、車掌がやってきたので、そこで乗車券である『弧廻手形』を購入。
これは、電車の他に観光施設の入場割引券も付いてくるものだ。

車内は一昔前の雰囲気。
走り出したかと思えば、もう隣の駅。
見れば改札が昔の駅での光景。自動改札ではなく、人に切符を見せる。
残念ながら、切符を切る音は聞こえてこない。

一駅一駅の間がとても短く、あっと言う間に終点の『外川(とかわ)』駅。銚子駅から20分もかかっていない。

『外川』駅の改札内や外観は昭和の雰囲気。
せっかくなので、入場券を購入。

懐かしき硬券。でも、半分は『観光用』として特別に作られているものなので、通常感が無く、おしい気もする。

普通の切符を『みどりの窓口』みたいに専用回線を通じて購入する以外では本当に久しぶりだ。
「○○まで子ども1枚」と言って切符を買ったのはもう30年以上前。

駅を後にして、海に出る。漁師町っぽさはあるが、案外きれいな家が建ち並んでいるので、それほどレトロ感は無い。



漁港、海沿いに歩くと、灯台が見えて来る。
ここは『長崎鼻』という岬で、この灯台は『長崎鼻一ノ島照射灯』という名前だそうな。


波が岩に当たり、飛沫が上がる。
東映のオープニングは、犬吠埼のどこかなのだそうな。確かにそんな感じだ。


この灯台から北の方角を見ると、目的地の『犬吠埼灯台』の白い姿が見える。ここから海沿いの道を歩いていくのだ。

途中、先ほど通り過ぎた『犬吠埼』駅への方角を示す看板があるので、駅の位置を確認するために、坂を上がり、国道を少し歩く。

そこには終点の外川駅とは全く違って洋風な建物が。
・・・なんで洋風建築なんだ?
駅の入り口付近には、廃車を利用したレストラン・・・なのだが、休業中。

駅の場所は確認できたので、元来た道を戻り、再び『犬吠埼灯台』を目指す。

遊歩道になっているのだが・・・濡れている!
おもいっきり波が当たっているのだ。
ずぶ濡れはカンベンなので、タイミングを計って走って通り過ぎた。

上に上がる階段があり、登りきると目的地の『犬吠埼灯台』。
入場料を払って、灯台に上がる。灯台内の螺旋階段はちょっと疲れる、が、上がり切った場所からの光景は・・・



東の果て。

水平線の彼方。

あの向こうには何がある・・・?



しばらくの間、空と海と風を体の全てで感じ取る。

灯台からさらに北の方角を見ると、砂浜が広がっているので歩いてみた。

『君ケ浜』。

雲行きが怪しくなってくる。
今日の天気予報は『曇り時々雨、雷雨に注意』。
おかげで、様々な雲の形を楽しむ事ができる。



昼も過ぎて、天気の事も含めて潮時かなと感じ、後は昼飯を食べて帰ろうと決めて、水族館『犬吠埼マリンパーク』にあるレストランへ。
注文したのは、いわしの天丼。

美味い!

みそ汁がおかわり自由なのだが、あら汁となっていて、ほとんど具は無いに等しかったが美味しくておかわりしてしまった。
銚子駅に戻ってから昼飯にしようかとも考えていたが、ここで正解だった。
水族館で海鮮ものを注文するのは、ビミョーな気分だが。

マリンパークからまた灯台近くに行って公園内に腰を落ち着けて、帰りの特急券の予約をしようと、iPhoneでWiMAXに接続を試みるが、さすがにWiMAXの圏外なようだ。

ここでの予約はあきらめて、銚子電鉄の犬吠埼駅へ向かう。
乗車券で、一日乗降自由である『弧廻手形』には、『ぬれ煎餅1枚サービス』という特典もあるので、さっそく使ってみる。
食べようとおもったが、もう電車が来る時間になってしまったので、家で食べることにした。
車内で食べてる人達がいたが、いくら観光色が強い電車とはいえ、地元住民の足でもある電車の中で食べるのはいかがなものかと・・・。

銚子駅の一つ前の駅、『仲ノ町』付近では、醤油の良い香りが車内に漂って来る。
ヤマサ醤油、ヒゲタ醤油といった醤油で有名な場所でもあるのだ。

銚子駅に戻り、帰りの特急券も無事購入することもできて、まだ1時間ほどあまっていたので、銚子駅周辺を散策してみることにした。
駅前大通りをずっとまっすぐに進むと、大きな川に出る。

利根川、そして『銚子大橋』。
さすがにこの橋を渡りに行くには時間が足りない。
駅前まで戻るが、案外観光然とした感じの無い通りのように感じた。

すでにホームには帰りの特急が入っているので、後は車内でゆっくりしようと思い、改札をくぐる。

でもまだ少し時間があるので、また銚子電鉄のホームへと向かってみる。
さきほど乗ったものと同型の車輛が止まっていた。
またも懐かしい顔。元・銀座線。
ずっと東京の地下で活躍していたものが、地上で活躍。
駅近くで車内の照明が一瞬落ちるのは、もうずいぶん昔の話(笑)。

さて、特急列車の時間が迫ってきたので、戻ることにした。
東京から片道約2時間ほどで来れる銚子。
再び窓の外には、田畑ではなく、ビル群。そして会社帰りの人達の姿。
また戻ってきたのだと実感、安堵はするが、寂しい気もする。

今回の旅もこれにて終了。

文中に東の果て、とは書いたが、実際には犬吠埼が果てではなく少し北に位置する『君ヶ浜』が『関東および千葉県の最東端』なのだそうな。

自宅に戻ってから食べた『ぬれ煎餅』は、ソフトな食感が優しくて食べやすく、醤油の味が何かとても懐かしい感じがした。

(了)