粟又の滝【千葉県夷隅郡大多喜町】


午前5時21分発『君津』行きのJR総武線快速。
まだ陽も上がっていない空を見ると、秋を感じさせる。

千葉駅を過ぎて、内房線に入る。
そして、『五井』駅で降りる。

ここからは、小湊鉄道に乗り換える。

小湊鉄道は電化していない、気動車の路線。
オレンジとアイボリーの車体が少し横に揺れながらホームに入って来る姿がとてもかわいらしい。
車庫には、出番を待つ仲間達の姿も。

発車の時刻とともに、ディーゼルエンジンの音が響く。
『電』車には無い、温かな響き。

乗車券は、ICカードは使えない。
車内で車掌さんから切符を購入することになる。






車窓からは田畑が広がるのんびりとした風景。
途中の駅は無人駅も多い。



『養老渓谷』駅で降りる。
ここから歩いて、『粟又の滝』を見に行く事が今回の目的。

次の『上総中野』駅で小湊鉄道の終点となるが、滝を見てから歩いて向かうつもりなのだ。
そして、『上総中野』駅はいすみ鉄道の乗換駅でもあるので、それに乗り、外房線の『大原』駅を目指す。
これで千葉県を縦断するような形となる。


30分ほど歩くと、観光街となっている『養老渓谷』に到着。

旅館、温泉等が立ち並ぶが、まだ紅葉の時季ではないので、閑散とした雰囲気。

旅館そばの横道に入ると、川に沿ってキャンプ場へ向かう道がある。
こちらが目的地に向かう道ではないのだが、少し寄り道。

途中までは遊歩道がしっかりとしているが、川を渡ったあたりから少し暗い林の中へ進む道となる。
キャンプ場までには少し時間がかかりそうなので、元来た道へ戻ることにする。

駅から寄り道を含めて、およそ1時間30分。少し広い道と交差する。
変な十字路となっていて、方角としては今来た道のまま直進で良いハズ。
と、思ってそのまま歩く。
目の錯覚か、途中で道が切れている、というか山にぶつかっている。
どうやら将来的にはこの山を切り崩して、『粟又の滝』へ向かう道と合流できるようになるようだ。

そんなわけで、少し道を戻る。
少し坂を下ると、しっかり『粟又の滝へ』と書かれた標識がある。

ここから急に山間の道になる。かと思えば民家や田畑の間を過ぎたりする。
本当に滝があるような渓谷があるのかと疑いたくなってしまう。
ゆるく長いアップダウン、アスファルトの道が続くので、案外足が疲れる。

どうやら目的地(への入り口)らしく、旅館、土産物屋などが見える。
その脇の道に入ると、『粟又の滝』へ向かう遊歩道に入る。

入ってすぐに、『粟又の滝』。
ゴウゴウと滝壺に水が落ちるような大迫力の滝、ではなく、幅広で高さが低く、水は穏やかに流れる。

この川は『養老川』と呼ばれていて、その滝という事も有って『養老の滝』とも呼ばれる。

上流にある『粟又の滝』から養老川に沿って、遊歩道が1キロ以上続いている。
途中にもいくつか滝がある。割とおとなしめ(?)な滝が多いので、のほほんとしながら滝見物。



紅葉ともなれば、かなり美しいであろう景色が想像できる。
でも、まだまだ緑が深い。









遊歩道は意外と長く、1時間ほどでようやく出口となる。
階段が有り、ここを上がれば元来た道まで戻ることができる。

途中の道で、『幻の滝』と書かれた看板がある。
茶店のような感じで、てっきり店の名前かと思って通り過ぎてしまうところだったが、この先に『小沢又の滝』がある。
ちなみに、維持管理費という事で入場料(100円)が必要。

お店の中を進むと、滝へ向かう階段がある。
途中板が割れかけていたりするので、結構危ないのだが、入場料では修繕が間に合わないのだろうか・・・?

『小沢又の滝』は先ほどと違って、それなりに高さのある場所から落ちてくるので、とてもひんやりとしている。
広くはない場所に3箇所くらいから流れ込む滝壺となっている。






昼を回り、そろそろタイムアウトとなるだろう、と考えて『小沢又の滝』を後にする。

やはりアスファルトの道は長時間の歩行にはきつく、足が痛くなってきてしまった。
車道脇の道祖神のそばで、靴を脱ぎ、ストレッチ。


来る途中、分岐した道まで戻り、国道を通って『上総中野』駅を目指す。
人は全く歩いていない。車が通り過ぎて行くのみ。
外房と内房を結ぶ、物資を運ぶことがメインの道だからなのだろうから、民家なんて無い。
脇道がほとんど無いので、案内標識がいつまでたっても見えてこない。
あとどれだけの距離を歩くことになるのか不安にさせる。

ひたすら歩く。
午後の日差しは意外と暑く、なぜかまだツクツクボウシが鳴いていた。


ようやく案内標識が見えて、商店街に入る。
少し歩くと、『上総中野』駅に到着。

小湊鉄道の終点であり、ここからいすみ鉄道に乗り換えるための重要地点の駅のはずだが、無人駅。
あらかじめ、小湊鉄道車内で購入した切符『房総横断記念乗車券』があるので、そのまま待つだけ。
ちなみに、この乗車券は五井から大原までの片道切符で、一日乗り降り自由だ。

時刻表を見ると、まだ1時間以上待つことになるので、しばらく駅の風情を楽しむことにした。
いすみ鉄道も電化していないので、駅の空は架線が無く、広々としている。







そしてようやくいすみ鉄道の車両が駅に入って来た。
バスと同じエンジン音。こちらも小湊鉄道と同じく、気動車。
ほとんどバスに近い様相。いわゆる”レールバス”と呼ばれるもの。
黄色の1両編成で、ムーミンがイメージキャラクターなのか、車体に描かれている。

小湊鉄道との連絡待ちでまだ発車はしない。
小湊鉄道のディーゼルのエンジン音を聞こえてきて、車体を揺らしながらホームに入って来た。
小湊鉄道が折り返して行くのを見届けると、いすみ鉄道も発車。

JR『大原』駅を目指す途中の駅から、ほとんど席が埋まるくらいになった。
沿線の景色はというと、全然知らない。疲れてしまっていて爆睡・・・。
眠りから覚める頃には、もう大原。そしていつの間にやら車内は人でいっぱいになっていた。

大原駅に着いたら、後は東京までの特急でゆったりして帰ろう、などと考えていたら、あと5分もしないうちにやってきてしまう。1本逃そうとも思ったが、予約が取れてしまったので、大急ぎでホームへと向かう事に。

2時間もかからずに、東京に戻った。
今回もおおよそ15キロくらいは歩いていたことになるだろうか。
後でGoogleMapで全体を見渡していたのだが、4、5時間歩いた距離の長さと、特急列車の東京までの距離と時間を比べると、あまりにちっちゃいもんだなあ、とため息が出てしまった。

(了)