石割山【山梨県南都留郡山中湖村平野】


あっちゃん、俺ァ鳥になりたいよ。
空を飛ぶんだよ。なァ、あっちゃん。

高尾駅、電車のドアをくぐり抜ける初老の男性は、つぶやいた。
あっちゃん――友人だろうか――は何も答えなかった。

07:22、大月
富士急行に乗り換える。

富士急行の線路は間隔が短い。だから絶え間無く「ガタンゴトン」と継ぎ目を越える音が続く。それがまたとても心地良い響きとなるのだ。

連休ではない、もしくは月曜日を休みにして四連休とした人にとっては連休最終日だからかどうかはわからないが、車内は山登りスタイルの人はほとんどいない。

富士山駅に登着。

今回もJRの『河口湖・山中湖セレクトフリーきっぷ』を使い、周遊バスの『ふじっ湖号』で山中湖方面を回り、『平野』を目指す。平野は昨年行った『鉄砲木ノ頭』への出発点でもある。

『河口湖・山中湖セレクトフリーきっぷ』は一年間限定発売で、今月いっぱいで販売を終了するが、4月からは『河口湖・山中湖セレクトフリー乗車券』という名前に変わり、平日であれば500円も安くなる。

9:30、平野

『道志みち(国道413号線)』の途中、分かれ道となり、この赤い鳥居を左に進む。

天気は良いが、車の往来が少ない場所になるとまだ雪が残っている。

登山口となる鳥居と、目印ともなる黄色の橋が見えて来た。


鳥居をくふると、真っすぐに伸びる階段・・・って長い!
登り始めるとすぐに暑くなってくる。着た防寒具を脱いで腰に巻く事にした。
全部で403段!
途中雪が凍りついていた箇所も多かったので、なんだか余計な体力消耗となってしまった。

階段が終わると山道となるが、やはり雪が残っているのと、融けた場所でかなりぬかるんでいた。アイゼンもあっという間に泥が詰まる。


休憩ポイント。

桂(かつら)御神木。

10:45、石割神社に到着。

標高1143mの石割山の8合目付近に位置する石割神社は大岩を御神体とする神社で、この岩の隙間をくぐると無病息災の御利益があるといわれ、岩からしみ出る水は霊水として信仰されている。
(山中湖観光協会 公式ホームページより)

年配の人達の集団で、狭い場所がいっぱいで騒がしい。石を見て回るよりも先に進む事にした。

石割山の山頂までの登山道は狭く、急斜面が多い上にぬかるみも多く、意外とキツく感じられた。
掴まるためのロープが垂れ下がっている箇所がいくつかある。
登るコースを選んだが、下るコースとした場合、いくらロープがあっても滑りそうだ。

11:05、石割山。

山頂である。が、富士山はご覧の通り雲で隠れてしまっている。
雲がなくなるまで待ちたかったが、先程の集団が追いついてきそうなので、歩いていれば雲がなくなるだろうと信じて先に進む事にした。

今回はーつの頂上ではなく、このまま尾根づたいにいくつか山頂を目指す、『縦走』が目的だ。

石割山を降り始めたところで、富士山の頂上が見えた。
これなら、次のピークで全体を見られるようになるかな、と期待。


雪の残る道を進む。


木々の枝には、新芽。
春が訪れる。

石割山の次のピーク、平尾山。


富士山はまだ全部は見えない。

ここで昼食とするが、食べているうちに石割神社での集団が追いついて来た。また騒がしくなって来たので、荷物を片付けて次のピークへ進む事にする。せっかくの景色もこれでは楽しめない・・・。


11:50、大平山。

ここに登る手前のカヤトの原が刈り取られていて、まるで絨毯のよう。



山中湖、東方面を見ると、『鉄砲木ノ頭』が見える。


13:17、飯盛山。

暑い!ゴアテックスと同様のウェアを着ていたが、脱いで腰に巻いて進むことにした。

13:30、長池山。

・・・あれ、どこが長池山だったのか?後でGPSやネットで調べたら、道標にひっそりと書かれていたようだ。
地味で気づかなかった・・・。

分かれ道となり、一方は山中湖畔へ降りる事ができるが、そちらではなく、もう一方の道を行く。
ここからは富士山の見えない斜面を下って行く。
あまり陽が当たってないようで、完全に雪道だ。

『熊出没注意』。
先ほど、犬の足跡を見たが、気のせいか犬とは違う形の跡があったような・・・?


別荘地帯を抜けると、最終到達地点である『花の都公園』に到着。

花の都、と言っても残念ながら何も咲いていない。
ガイドには『四季折々』と書いてあったのに・・・。

富士山は今頃になって雲の覆いが取れた。

『花の都公園』バス停近くの駐車場でジュースを飲みながら30分ほど待つと、帰りのバスがやって来た。

富士山駅に戻って少し腹ごしらえしようと思ったが、駅ビル内はあまりパッとしなかった。
観光地の割にはなぜか普通の駅ビルで、つまらない。皆電車よりも車で来るからあまりカを入れていないのだろうか?
電車はまだ来ないので、屋上まで行ってみる事にした。
ガラス張りの展望台となっているこの場所で、今日見て来た中で最も奇麗な富士山の姿を見る事ができたのは、ちょっとくやしい気分。

それでも『縦走』はできたので良しとしよう。

鳥になりたいと言った、高尾駅でのあの人はどうしただろう。
翼を得たら、何を見る・・・?

(了)