三つ峠【山梨県都留市/西桂町/富士河口湖町】



「かちかち鳥が鳴いているんだよ。」
ウサギは言った。


東京始発の中央線に乗り、高雄へ。高雄から中央本線で大月へ。大月から富士急行で河口湖へ。
7:44、河口湖駅に到着。
売店で何か菓子類でも買って行こうかと思ったが、まだ売店はやっていない。

歩いて173号線まで出て、右方向に進み、途中左に曲がる。
少し坂道を上がると、鳥居が見えてくる。
今回のスタート地点である天上山護国神社だ。
ご覧の通り、桜がまだ咲いている。

神社には入らず、鳥居手前の橋を渡るとハイキングコースとなっているので進む。
アジサイが並ぶコースを進む。6月ならきっと綺麗なのだろう。

コースの近くにはロープウェーがあるが、使わない。
時間稼ぎに使いたかったけれど、まだ営業時間ではない。

その頂上駅が民話『カチカチ山』の舞台となった天上山への入り口となる。
と、言っても、太宰治が執筆した小説の舞台がこの辺りなのだそうな。

売店と展望台があり、そこら中にタヌキとウサギのキャラクターが置かれていてかわいらしいけれど、結構残酷な内容なだけに微妙な気分。

“かちかち山”
http://ja.wikipedia.org/wiki/かちかち山


今日は非常に天気が良く、富士山も裾までクッキリよく見える。
まだ朝だからこれだけ見えるが、おそらく午後まではもたないだろう。

反対側を見れば、河口湖。
空を映す水面が美しい!

売店の奥に『三ツ峠方面』と書かれたアーチがあり、ここからが登山の始まりだ。


『天上山山頂』方向を示す看板があるが、おそらく昼か昼過ぎに三つ峠山頂に着くと思われるので、寄り道せずに『三つ峠』方向に進む。

富士山を背に登る。
とても明るい樹林帯を通る。
暑い・・・。もうこの時点で半袖一枚で進む事になった。

しばらくして、急にすぐ背後から走ってくる音が聞こえてびっくりしてしまった。
どうやらこの近所の学生達で、部活の練習か何かのようだ。
確かにこりゃ良い練習場所だ。

ちょっと坂がきついかな、と思うとなだらかになり、再びきつくなる、という繰り返しで案外調子良く進む。
それでも、やはりきつくなって休み休み進む。
まだ木々は芽を出したばかりのものが多いので、空もよく見える。
その分日差しも強く、水分をこまめに補給しなければならない。




送電鉄塔の立つ、草地。風が気持ち良い。
先ほどの部活の学生達にゴール地点となっていたようだ。
河口湖がだいぶ下になっている。この時点で湖から500m以上登った事になった。



あまり陽の当たらない場所を進む。
おとといがおそらくここらへんも雨が降ったはずなのだが、それほどぬかるんでいるわけでは無い。
昨日に登山予定をしなかったのは正解だった。

再び明るく、ゆるやかな尾根を進む。



しばらくすると、急角度な道となる。右手には岩山が見える。あともう少しでゴール地点の『三つ峠』だ。
急な斜面が終わると、明るい草地に出る。ここは『木無山』。
分岐点ともなっていて、今回の帰りのコースでもある。




木無山を過ぎて、三つ峠より少し手前の山小屋に到着。
ここから富士山を眺めるも、案の定頂上に雲がかかってしまっていた。

眼下に広がる町並。
おそらく行きの電車の中から今の場所も見えていたはずだ。

山小屋をすぎると、広場になっていてたくさん人が来ていた。
テントを張っている人達も結構いる。

ここに居る人達のほとんどは、僕の通って来たコースではなく、『裏口登山道』と呼ばれる、車でもかなり近くまで来られるコースを使ってきたのだろう。
『表登山道』は、富士急行の『三つ峠』駅から来るものだが、『裏』の方が人気コースであるようだ。
僕のたどったコースはとにかく長くずっと登り詰めなので、下りコースの人は多いが、登って来る人はほとんどいなかった。

広場を進む先の電波塔が見えるピーク。そこが『三つ峠』だ。
開運山(1,785m)、御巣鷹山(1,775m)、木無山(1,732m)の3つの頂上の総称して『三つ峠』なのだが、最高峰である開運山を指すのでもある。

ちょっときつめの斜面を登り切る。
富士山と、富士吉田市が一望できる。
これで雲さえ無ければ・・・!


南アルプスも見える。
画像からではわかりにくすぎるが、八ヶ岳もうっすらと見えている。
いずれ登りたいと思っている、目標の山だ・・・!

開運算の頂上は狭いのに、ここで食事をとる人がおおいので、さらに狭い。
ゆっくりもできないので、さきほどの広場まで戻る。

先ほど見えていた、岩壁が見える。
『屏風岩』と呼ばれていて、ロッククライマー達にとって良い練習場所となっているようだ。
結構登っている人達の姿が見える。

そういえば、マウンテンバイクでこの広場まで来ている人達もいた。
すごいな・・・。
日帰り旅行では、そんな体力の配分は考えられないが・・・。

富士山から雲が取れる様子も無いので、下山する事にする。
御巣鷹山まで行くと、帰りの時間に影響が出そうなので、2つの頂上のみで終わるとする。

『木無山』まで戻り、分岐点を右に進む。
その先には、『母の白滝』がある。
えんえんと続く下り坂。

こちらのコースも人がいなくて静かだ。
三つ峠にいた人達は、帰りも『裏口』を使って戻るのだろう。

林道との交差。『通行止』となっているが、下山はこの先を進む。



林道と何度か交差するが、案内板があるので迷う事は無い。
気を付けるとしたら、鉄塔の側を通る分岐か。鉄塔の奥に森の中に入る道がある。



水の音が聞こえて来る。
心地良い川の流れのサウンド。
疲れもあって、眠くなって来る。

途中、急な階段などで手すり(鎖)があるが、外れて落ちてしまっている箇所もある。
あまり手すりに頼りすぎない方が良いだろう。



この『寺川』という川沿いを進むと、『母の白滝』だ。
ずっと下り坂で足が疲れてしまっていたが、家族連れが騒いでいたので、休むことなく進むことにした。
下り切れば、河口湖へも近くなるので、湖畔まで出て、そこで休む事ににするのだ。

このままさらに寺川沿いの道を進む。
足元でガサガサという音にちょっと驚く。ヘビがいたのだ。
幸い毒を持つタイプではないようだが、春となると様々な虫も出て来るので注意しなくてはいけない。

民家脇の道を通ると、137号線(御坂みち)が見えて来る。

そのまま進むと、浅間神社を裏から入る形となる。
立派な御神木。

鳥居をくぐると、また国道に出る。こちらも137号線(御坂みち)。
付近を通るバスはあらかじめ調べてはいたものの、あまり都合の良い時間には来ないこともわかっていたので、湖に沿って進み、歩いて河口湖駅まで戻る事にした。

河口湖美術館がある公園を通り、湖畔へ出る。
もう足はクタクタ。お腹も空いて来たので、途中のコンビニで買ったサンドイッチを食べる事にした。
食べながら右手奥の方を見ると、桜並木が続いているのが見える。
せっかくだから、花見をして行こう。


だいぶ葉が出て来てはいるものの、もうしばらく花見を楽しめそうだ。

さて、もう4時を過ぎてしまった。
湖沿いの道をずっと行こうかとも思ったが、体力も無くなってしまったので、河口湖大橋を渡って少しだけショートカット。

河口湖大橋までやってくると、ようやく富士山の頂上が見えて来た。
旅の最後に見られたのはラッキー。

河口湖は、他の湖とくらべてもずいぶん賑やかで、観光地らしさがある。
駅から歩いてすぐでもあるし、ロープウェーで簡単に展望の良い場所に上がれるのも丁度良いのだろう。

橋から東側を見ると、ロープウェーが見える。
あの尾根をずっと歩いてきたのだ。

ようやく河口湖駅に戻る。
空はだいぶ雲が広がってしまった。

この5月の連休中は、ここではなく、他の富士山を見る以外にしようとも考えていたが、登山系の雑誌でふと目に入ったのが、三つ峠で、5度目の富士山近くの登山となった。

朝8時から午後5時まで登り詰め、下り詰め、歩き詰め、行程約20kmという感じでかなり疲れたが、今までの富士見登山(?)で一番充実できたような気がする。

昨年からトレッキングのようなものを始めたが、時期的に秋冬が多いものの元々暑がりのため丁度良かった。逆にこれからの季節は僕にとっては極端に体力を削られる辛い時期だ。
夏山に備えてがんばらなくては。

(了)