當麻寺(当麻寺・たいまでら)【奈良県葛城市】


カッコイイ仏像を見たくて。
京都・奈良と言えば、数多くの歴史的文化財でいっぱいだ。
奈良の大仏、清水寺、金閣寺、銀閣寺・・・等、修学旅行で訪れた人も多いだろう。
僕自身も中学校の修学旅行で京都を回った。が、その頃はまだ仏像に対してはそれほど興味や思い入れは無かったと思う。
阿修羅像などは当時も素晴らしいとは感じても、魅力までは感じていなかったはずだ。

それから20年以上経って、『行ってみたい』と思う仏像があった。
きっかけは、年賀状に描くイラスト用のネタとして、仏像の着ているものをネットで調べていた時だった。

場所は奈良県にある、『當麻寺(たいまでら)』。
そこにおわす『四天王像』だ。

四天王像自体は、どのお寺にも大体ある。

東の守り、持国天
南の守り、増長天
西の守り、広目天
北の守り、多聞天

中心の仏様を守るため、カッと目を見開き、睨む。
武器を携え、振り下ろそうとし、今にも動き出そうとするかのような『動』の姿。

おおよそのイメージとしては、これが『四天王像』だ。
だが、當麻寺の四天王像は全く逆。

優しい目で見下ろし、口元は微笑みかけているかのようにも感じられる。
『静』のたたずまいだ。

こういう立像になったのは、同時の技術力やアイデア、素材の限界で、あまりダイナミックな動きをさせてしまえば、あっという間に破損してしまうからでもあるのだろう。

顔の造りだけを見ても、同時代の仏像達とはだいぶ違う。
口ヒゲにもしゃもしゃとした顎ヒゲという出で立ち。
大陸からの影響が強く、シルクロードの途中の民族の特徴が残る。
それでいて『和』をも強く持ち合わせる、不思議な雰囲気だ。

江戸時代の浮世絵まで残る、写楽が描くようなぐりっとした目、いわゆる”写楽目”の仏像が多い中で、このスタイルであることがすごく惹き付けられた。

當麻寺までの交通はこんな感じ。

・新幹線(のぞみ)
品川─新大阪

・大阪市営地下鉄御堂筋線
新大阪─天王寺

・近鉄南大阪線
天王寺─当麻寺

当麻寺駅(駅名はこの字)。

駅から寺までは、まっすぐに道を歩いていくだけだ。

山門は改修工事のためビニールで覆われていた。

境内に入ると、左手に『講堂』、右手に『金堂』

まずは中央の本堂(曼荼羅堂・まんだらどう)に行き、拝観料を払うとガイドを行ってもらうことができる。というか、勝手に見に入ることはできない。

最初に(右手)に入る。
ガイド、とは言ってもCDにあらかじめ録音されたものを再生するだけ。
『講堂』の本尊は阿弥陀如来。
次に『金堂』。いよいよ四天王像に会える・・・!

通路から正面に回り込むと、その姿を現す。

ガイドさんはいなくなり、あとはゆっくり観ていってね、という感じだ。
他に来る人もいなかったので、ゆっくりと観て行く事にした。

残念ながら、當麻寺だけでなく、どの寺も撮影禁止。
ガイドの人がいなくなったところを狙って、とも思ったが、素直に従った。

弥勒仏を中心に、
持国天、
増長天、
広目天、
多聞天・・・

優しい表情だ。
ガイドのCDの声も終わり、辺りは静けさが満ちる。
外は真夏。

おや、多聞天は全く造形が違う。明らかに違う時代のものだ。
あとでガイドさんに聞いてみると、當麻寺自体何度か焼け落ちている。その際に多聞天だけが永久に失われてしまったのだ。
そのため、多聞天だけが違う時代のものとなっているのだ。

多聞天がどんな姿だったかは、誰も知らない・・・。

粘土に漆で布を重ねばりしていく、脱乾漆像という技法で作られたそうだが、修復されてきたとはいえ、よく現在まで保つことができたものだ。

乾漆(かんしつ)像
乾漆造(かんしつぞう)とは、東洋における彫像制作の技法の1つで、麻布を漆で張り重ねたり、漆と木粉を練り合わせたものを盛り上げて像を形作る方法である。
(Wikipediaより)

今から丁度1400年前に立てられた、當麻寺。
建物だけでなく、四天王像も天災、人災などにより破損、消失してきている。
だが、それでも残していこうとし、修復し千年あまりも過ぎた現在にまで伝え続けている。
宗教でも伝えきれない何かが、ここにあるような気がする。

さて、じっくりたっぷりと拝観し、帰ることにする。
帰る、と言っても途中で奈良に寄って行くつもりだ。

奈良までは、

・近鉄南大阪線
当麻寺─道明寺

・近鉄道明寺線
道明寺─柏原

・関西本線
柏原─王寺─奈良

近鉄道明寺線は、出発駅を含めると、たった3駅。距離も2キロ程度しか無いミニ路線。
関西本線は大和川に沿って進む。景色がとても良い。
王寺駅どまりなので、ここから乗り換えて、奈良駅へ。

奈良駅は工事中。
ここから巡回バスに乗って、興福寺へ。

奈良県庁の入り口に『せんとくん』が・・・。

十二神将を始め、中学の修学旅行以来約20年ぶりに、阿修羅像の姿を観ることができた。
十大弟子立像、法相六祖坐像は表情がすばらしい。

午後3時。日帰りのため、そろそろ出なければならない。
まだ昼ご飯も食べていなかったので、駅近くで湯葉料理でも、と思ったのだが、駅工事中でよくわからない。
しょうがないので、結局モスバーガーで済ませた。
まあ、味はどこに行っても変わらないので、安心と言えば安心だ(?)。

まだ少しだけ電車がくるまで時間があったので、兵庫・西宮に住む友人に電話したが、繋がらなかったので、メール。

奈良駅から京都までは、

・奈良線(奈良線みやこ路快速)
奈良─京都

京都駅は相変わらずデカい。
夕方の通勤ラッシュでもしや新幹線の切符は難しいかと思われたが、あっさり購入。
30分後に出発となってしまったため、ゆっくりしていられなかった。

またいつか仏像巡りをしよう。

(了)