浜風は変わる【福島県双葉郡広野町/いわき市久之浜町】


冬晴れの空の下、風は大きく動き出した―。

風は冷たいけれど、日差しを背中に浴びるとポカポカとしてくる。
そんな広野駅から歩き出した。
駅前は常磐線の工事関係の人と車でいっぱい。
進む常磐線の竜田駅までの工事。今日は土曜日、そして連休ともなるが、今年のダイヤ改正に合わせて 休む事無く続けられている。
9月にも来た田畑もすっかり冬景色。
今回の広野町での目的地は、『二ツ沼総合公園』、その入り口にある直売所。
昨年の夏から再オープンした。
そしてここで購入したのは、広野町で穫れたお米!『ひろの復興祭』の時に買って、とても美味しかったので、また食べたくなったのだ。直売所ならきっとあると思ってきたのが大正解。
しばらくレジのおばちゃん達と歓談の後、公園の中へ。
ランドマークとも言える、風車。風が冷たいけれど、上がってみる。
昨年来た時は誰も人がいなかったのだが、今日はパークゴルフを楽しむ人々の姿を見る事ができた。
ようやく公園が公園らしく、人が集まる場所となってきた。
そんな公園を後にして、広野駅に戻る事にする。
再び常磐線の工事現場へ。
木戸駅、竜田駅のある楢葉町は今現在『避難指示解除準備区域』であり、区域への立ち入りはできても住宅等での宿泊はできない。また区域再編があるのかは分からない。
もしかしたら、ダイヤ改正が行われても、この地域は延期される可能性も考えられる。

だがこうして帰還に向けた準備が進められている事だけは確かだ。

広野駅に電車がやってくるまであと30分ちょっとだが、どうしても行っておきたかったのが、『松本稲荷』。時間がなくて裏から入る事になったけれど、ちょっとだけお参り。
広野駅に戻る。
春になったら、この先へ、楢葉の町をゆっくり歩き回ってみたい。
そう願いつつ、折り返す列車に乗った。
久之浜は大きく変わっていた。
2ヶ月前は重機が住宅跡に入り始めた程度だったが、今日はもうすでに住宅の基礎は無くなり、その残骸が積み上げられた、更地になりつつある状態だった。
人の住んでいた証さえも消えてしまいそうで、少し寂しい気もしてしまう。
それでも、生き残っていくために防災緑地、宅地、商業用地へと変わり始める。
1年後、どんな姿になっているだろう?
今日の最後の目的地、『浜風商店街』。
残念な事が一つ、『久之浜ふれあい情報館』が無人の展示スペースとなっていた。
ここで多くの人達にこの久之浜の事を伝えていたSさんが辞めてしまわれたとの事。

復興商店街として、どこよりも早くオープンした『浜風商店街』。
他の地域にもこうした『商店街』はあるものの、あくまで商店である以上、商売をする場所。
元いた住民が帰還する時のための場所。
けっして『テーマパーク』のような存在を目指す事が目的では、無い。

それでも、多くの人達がここを訪れ、様々な事を学び、考えるための場所となっていた。
そして、その『語り部』としての役割をはたしていた…。

Sさん、お疲れさまでした。
この1年、色々お話ができてとても良かったです。
ご挨拶ができなくてとても残念でしたが、次の場所でのご活躍をお祈りしています!
またどこかでお会いできたら嬉しく思います。

(了)