浜風の空の彼方に【福島県いわき市久之浜町久之浜字東町】


たくさんの人の想い、願いが空の向こうへ届けられた。

東日本大震災から丸3年、そして4年目となる今日、久之浜でもまた追悼式が行われた。
東町のこの一角は、1月に来た時とは違い、更地化はほとんど終えたようで、かさ上げ用の土台が出来始めていた。
かさ上げ工事の進む中、秋義神社は変わらずそこにある。
震災遺構として残されるが、周囲からは少し低い位置となるのだろうか?
昨年よりも献花に訪れた人の数が多いように感じる。学生達の姿もあり、“被災地ツアー”の場所として、より多くの人達にこの場所を知ってもらえたのかもしれない。
午後2時46分、サイレンが響き渡る。
黙祷。

今年もこの1分間、多くの人達の心が一つになったに違いない。
それでも、少しずつ“忘れられてゆく”…。

僕自身、1年半を過ぎてから福島を初めて訪れ、その時に見た光景が想像できる『始まり』であり、更地化したこの場所に、今日初めて訪れた人達には当時の様は想像しにくいと思う。

だが、ここから10数キロ歩けば、除染廃棄物が入れられた黒い袋(フレコンバッグ)が積み上がり、雑草が伸び放題、ひしゃげた車が転がり、そして誰もいない町の姿を見る事になる…。

1時間ほどすると、献花台も片付けられほとんどの人がいなくなった。
この場所は再び工事現場となる。
静かで、穏やかな海。
だが、3年前はこれから『始まる』…。

もっと多くの人が現在の姿を知るべきなのだろう。
テレビなどの報道では、数家族の姿を映し出し、家族を失いつつもその苦しみから抜け出そうとする“希望”を見せるが、あくまでそれは一部でしかないという事を想像しなければならない…。
東町を後にして、いつものように『浜風商店街』へ向かう。
途中大型バスが数台、おそらく追悼式に参加した人々が商店街を見学し終え、帰るところだったのだろう。
商店街では、だいぶ落ち着いた感じになっていた。

『からすや食堂』に行くと、顔なじみとなった方達の姿があった。
ずっと写真を撮り続け、情報館の壁一面に当時の様子を見せてくれている、Iさんと会う事もできた。

今回も午後5時半にはここを出て帰らなければならないのだが、今日は6時からとある団体が主催する花火大会があるという事だった。
事前に知っていれば、帰りの列車を1本後にしたのに、残念…!

ここに来ると、あっと言う間に時間が経ってしまう。
桜の花が咲く頃に、また来よう!
(了)