木戸駅【福島県双葉郡楢葉町大字山田岡字一升平】


その先の向こうへ…!

今年も『広野町サマーフェスティバル』に行くために、常磐線に乗る。
座席に着くといつもよりも乗客が多く、あっという間に満席。とうとう指定席通路に立ったままの人達も出て来た。
どうやら勝田で行われる、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』に向かう人達のようだ。
勝田駅に着くと、今度は車内はガラガラになってしまった。
いわき駅に到着。
台風11号の影響で、空はどんよりとしている。
各駅停車に乗り換える。
掲示板に表示される終着駅は『竜田』だ…!

昨年もサマーフェスティバルが始まる前に木戸駅に訪れたが、その時は広野駅から徒歩だった。

昨年の夏の終わりから始まった広野-竜田駅間の復旧工事が終わり、2014年6月1日より運転再開となった。
これにより、常磐線の上野、水戸方面からの終着駅が2つ先まで復活した事になる。

広野駅を発車する。
発車のメロディーは『汽車』だ。いつもならこのメロディーを聞くと『帰る』イメージだったが、今日は違う。『先に進む』のだ!

先頭車輌の窓から見える景色は自分が工事に関わった訳でもないのに、とても感慨深い。写真を撮らせてくれた工事現場のあの人達は元気にしているだろうか…?

窓の外に流れて行く広野の景色。
上を見ると、錆びだらけで草がぼうぼうに生えた線路を見下ろした橋が見えた。
木戸駅まではこんな風だったんだ、と思う間に、駅に着いた。
改札に向かうと誰もいない。無人駅となっていたのだ。
待合室には券売機は無く、代わりに乗車証の発行機が置かれていた。

今回も駅から東に向かう。
新しくなった踏切。
途中、畑の向こうを走る列車の姿を見る事ができた。
川に落ちてそのままだった重機、畑に転がっていたバイク、潰れた軽トラは片付けられたようだったが、半壊の家々の様子は変わっていないように思えた。
橋を渡って北に進む。
白い壁が続くが、その内側は大量に出た廃棄物の処分場となっていた。
その壁に描かれた絵。
楢葉町を象徴する自然の姿がそこに有った。
更に進むと川にたどり着く。
ここが今回の目的地、『木戸川』だ。
木戸川はサケが帰ってくる場所であり、それが先程の絵となっている。
もう海はすぐそこ。
台風が近づいている事もあって、波は荒い。壊れた堤防は震災によるものか、以前からの老朽化によるものなのかは、分からない。
さて、帰ろう。
と言っても広野に行くわけだが、また歩いて行こうかと考えつつも、とりあえずは木戸駅に戻る事にした。

楢葉町は今年、帰町を断念し、一部を除いてほぼ誰もいない町のままとなっている。
それでも、あの列車の姿を見ると、あともう少しなのかもしれない、と楽観的ではあるだろうけれども、そう願いたくなる。
(続く)

2014.8.9