海が、見えない―。
夜が明け始め、いわき駅から竜田駅行きの列車に乗る。
夜が明け始め、いわき駅から竜田駅行きの列車に乗る。
約半年ぶりの竜田駅。
今年の1月31日より、ここから原ノ町駅までの代行バスが運行開始された。朝と夜の2便ととても少ないが、ようやくこれで途切れていた常磐線の区間が結びつけられた。
龍田神社はその後の除染作業のため、大きな木の枝が刈られ、なんだか寂しい参道になっていた。
富岡駅へ向かう線路も奥が見えるようにはなっているものの、復旧はいつになるかは分からない。
車と排気ガスを避けるため、国道6号線ではなく、県道を通る事にしたのだが、想像以上の車(作業車等)の往来が激しい。どうやら6号線へのバイパスとしても機能しているようで、その接続ポイントへの交差点で次々と車がそれて行った。
坂道の歩道の外側には小川が流れていて、ちょっとした渓谷のような岩肌になっている。水がきれい。
住宅街を通る。
人はいない。
家々は、応急処置程度しか行う事ができないため、ボロボロになっていくだけだ。
崩れた塀もそのまま。
時折、重機が家を解体している姿を見る。
避難指示解除準備区域であり、仮設住宅も建てられないまま全町民が町外へ避難。
インフラの復旧を進め、2015年春以降に帰町を目指している。でも、住民が期待する姿とはほど遠い現実…。
福島第二原子力発電所へ向かう道を渡り、6号線に接続。
角にあるガソリンスタンドが営業再開していた。
除染が進んだ事もあって、周りの田畑は雑草が無くなり、地面が丸見えになっていた。歩道のススキもすっかり無くなり、歩きやすくなった。
途中の休憩所にあった、楢葉町の絵。
半年前に行った、遠くに船があるように見えたあの景色だ。やはりあそこの景色は『絵になっていた』のだ。
雲行きが怪しかったが、とうとう雪が降って来てしまった。積もるようなものでは無かったけれども、風で吹き付けて来る。
先ほどの休憩所付近の道から海沿いに出るつもりだったが、除染作業と海岸近くに大きな建物ができた事もあり、そのまま6号線を通り、仏浜の交差点に向かう事にした。
坂を下り、富岡駅へ。
駅舎は全て解体され、何もなくなっていた。改札口もどこにあったか一瞬分からない。
駅の南側は大きな建物が出来て、その数編はフレコンバッグが積み上げられ、海が見えなくなっていた。
駅の解体とは対照的に、周辺の民家はそのままだった。流され、くしゃくしゃに壊れた車もそのままに…。
高台から海を望む。
その近くで、テレビ局の中継車が待機していた。
駅のそばに建てられた慰霊碑でお参りしている時に新聞社の人に聞かれたが、残念ながら僕は福島出身ではないので、何もスクープになるようなものは持ち合わせていないのだった。
雪がまた強くなってきた。少し早めに戻る事にした。
帰り道はまた県道を通る。
その道の脇には芽を出す木々の姿。地面にはフキノトウが。
『それでも』、春はやってくる。強い命の姿。
竜田駅が見えてくる頃、天気は急速に回復しだして、青空が見えるようになった。
一旦、龍田神社に行き、そこで休憩。
昨年通った道を通り、海沿いへ。先ほどの絵と同じだ。
除染が進み、田畑の雑草は無くなり、代わりに消波ブロックを海岸に置くための場所が出来ていた。そういえば、試験的に植えられた稲はどうなっただろうか?良い結果が出た事を切に願う。
桜の花が咲く頃に、また訪れよう。
そろそろ昼。午後に各地で行われる追悼式。
その一つでもある、久之浜へ向かう。
(続)
2013.3.11
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