2016年3月11日の楢葉町と富岡町。
午前9時半、
丁度
駅前に集まった人たちはどこかのテレビ局が取材の準備をしているようだった。
歩き慣れた富岡町へ向かう道。未だブロック塀が崩れたまま、家々の屋根はとりあえずの修繕も間に合わず、抑えとして置かれている土のう袋もボロボロになっているお宅などが見られ、前回歩いた時よりも更地化した住宅跡が増えていた。
前回歩いた時と大きく違うのは、切り取られた丸太が空き地に積み上げられている事。沿岸部の工事が活発になっている事もあって、その際に切り倒されたものが置かれているのか、森林の除染範囲が『里山にも拡大する』という方針により、その準備となっているのかもしれない。
住宅街を抜けて山道に入る。ガードレールから外を見下ろすと不法投棄されたゴミがずいぶん目立つようになっていた。これらが町内、町外から持ち込まれ投棄されたのかは分からない。町内放送のスピーカーからはゴミの分別がされていない事が語られていた。
町内の主要な道は除染などによりゴミなどは少ないが、結局はこういった除染の対象外となっている『見えない場所』に捨てに来てしまう人々が現れてしまう。
『福島県道244号小塙上郡山線』は福島第二原子力発電所を右手に進む道(山道)で、その事もあって住宅は無く緑に囲まれ、鳥が鳴き、楢葉町のシンボルであるヤマユリの大きな美しい花が咲く自然にあふれた場所だ。
陸前浜街道こと国道6号線に接続する少し前の常磐線の踏切。以前と景色は全く変わらず、レールは錆びて歪んだまま。
スタート地点である竜田駅から富岡駅までの復旧工事がこれから始まり、2017年内に再開するという。富岡駅は現在よりも少し内陸に側に移設をするという事なので、それに伴い土地も買い取る必要になるとは思うけれど、随分工期が短いように感じる。
6号線の歩道は夏に覆われていた雑草も枯れ、刈り取られて歩きやすくなっていた。
向こうには廃棄物処理場が変わらず見えている。
でも、今回はその前に行っておきたい場所があるので、通りすぎて双葉警察署に向かう。
途中、『富岡町交流サロン』が建てられている事は確認できたけれど、あまり時間がないので寄って行く事はできなさそう。
双葉警察署の駐車場に警察の方々、というより消防士の方々がいたので、目的の場所に入れるかどうか声をかけてみた。
警察署の裏手にある『岡内東児童公園』。ここが今回のゴール地点。
ここには大震災当時、避難誘導中に津波に襲われたパトカーが展示されている。
増子洋一警部補(当時41歳)と佐藤雄太巡査(当時24歳)が亡くなり、増子さんは太平洋沖で遺体が見つかり、佐藤さんは発見されていないという…。
持ってきた花束のうち一つを供えさせて頂き、消防士の方々と一緒に祈りを捧げました。
彼らもここに来たのは今回初めてだったという事で、ご一緒させて頂けたのを嬉しく思います。
増子さん、佐藤さん、お疲れ様でした。
あなたがたがいてくれたから、繋いだ命があるという事を忘れません。
仏浜の交差点まで戻る途中、何か動物の死体が2つ(ハクビシン?)。車に轢かれたものだろうか。あまり時間はたっていないようだが、それでもおそらくカラスか何かについばまれたのか、ぼろぼろとなっていた。
数回富岡町には足を踏み入れているが、今のところイノシシなどには遭遇していない。なるべく国道を通り、私道には入らないようにしているからではあるけれども、気をつけたい。
仏浜の交差点を曲がり、坂を下る。
先に見えている景色がまた変わっているのを、坂を下りきらずにも分かってしまう。
以前は駅は撤去された姿ではあったけれど、その周囲の商店街、住宅、くしゃくしゃになった車の残骸はそのままだった。
でも、今は商店街は更地化し、何も無い。
駅向こう、海岸手前の廃棄物処理場は変わらず、黒いフレコンバッグの山はさらに増えていた。
もうここが『駅前』であったことは分からない…。
放射線量が下がり、いずれまた富岡町では再編が行われ、人々が還り駅前にはまた活気が溢れる。
常磐線に乗って夜ノ森の桜とツツジを観に多くの観光客がやってくる…。
そんな未来を夢に、未来に、現実になる事を願いつつ富岡町を離れた。
竜田駅に戻る途中、雪がだいぶ降ってきた。そういえば昨年も雪に降られたけれども、後で青空が広がったっけ。
竜田駅からほど近い場所にある
しめ縄が新しくなり、新しい木材が置かれているところを見ると、これから修繕が行われたりするのだろう。
往復約16kmの道のり。あまり時間が無く、富岡町ではゆっくりできなかったので、ここでちょっと休憩してから竜田駅へ。
駅前は朝と同じくテレビ局の人々が集まり、上空にも報道ヘリが飛んでいた。
やってきた列車に乗り、『
その途中、木戸駅周辺では災害公営住宅の建設、沿岸部の工事、広野駅周辺では駅東側に大きなビルが建てられていた。
その少し前、
(続く)
2016.3.11