銚子電鉄【千葉県銚子市】



電気鉄道と早春の海へ。

“銚子電鉄自主再建断念―”
今月の頭にそんなニュースが流れた。
今までも何度か足を運び、昨年のクリスマスにも犬吠埼灯台を見たくて銚子に来たのだが、まさか年を明けてからそんな報道がされるとは思わなかった。いや、来るべき時が来てしまったのか・・・。

少しでも応援になれば、という気持ちで東京駅から『しおさい1号』に乗り込んだ。

この三連休は、JRでは成田線の佐原駅から銚子駅までをSLが走るイベント、そして銚子電鉄では開業90周年記念のイベントがが行われた。

うまくいけば銚子駅でSLを見られるかと思ったが、SLが来るまで待つのは諦めてしまった。
諦めた、というよりは早く銚子電鉄の終点『外川』駅まで行き、また『屏風ヶ浦』がよく見える海岸まで行きたかったのだ。

行きのJRの特急は、もう少し前から予約をとっておけば良かったのだが、行く三日前になんとか取れた、という状況だった。
予約できたのは良かったのだが、いざ座席に着くと、前の席に座っている女性の香水の香りが非常にきつく、さらに後ろの席ではまるで呪詛がごとくえんえんと独り言をつぶやく男性客・・・。

鼻にはハンカチ、耳にはイヤホンで塞ぐという状態となり、銚子に着く頃には疲れてしまっていた・・・。

SLを撮るために銚子近くの畑ではだいぶ人が集まっているのが見えたが、あんな所に入って良いのだろうか・・・?

銚子駅に着くと、やはりSL目当ての方達が大勢いたので、また人を見て疲れてしまうのがいやになって、さっさと改札を出てしまった。

いつもなら、改札を出ずにそのまま銚子電鉄のホームに向かうのだが、今日はイベントで混むだろうからと思い、一駅先の『仲ノ町』駅まで歩く事にした。

醤油工場のプラントと同時に、黄色い電車の姿が見えてくる。

昨年『屏風ヶ浦』に行った時の帰りでは、まだ塗装変更中だったけれど、この銀座線カラーとなったのだ。

クリスマスに来た時には、その少し前に踏切事故があり、運用から外れてこの車庫でお休み中だったが、復活できたようだ。
お年寄りの運転する車との衝突事故で、運転していた男性は重傷という事だったが、その後どうなったのだろう・・・?

『弧廻手形(こまわりてがた)』と入場券を購入し、車庫へ見学。
踏切からは、銀座線と対に丸ノ内線カラーの車輛。
方向幕は銀座線側が『浅草』、丸ノ内線側が『渋谷』。丸ノ内線が『渋谷』行き・・・?

車庫の奥には、『デキ3形電気機関車』。
これまた昨年とはカラーリングが変わり、銚子電鉄にやってきた頃の姿となったようだ。
相変わらずカワイイ姿だけれど、カラーリングは昨年までの方が好みだったなあ。

おそらくもう使われなくなったであろうパンタグラフが積まれていた。

銚子電鉄の車輛は、社のオリジナルは無く、他の鉄道会社からの買収や譲渡、改造により現在の姿となっているので、きっとこのパンタグラフも銚子の地とは違う場所で活躍していたものが、ここで眠りについているのだろう。






銚子駅から電車がやって来た。
銀座線、丸ノ内線、京王線が昔の姿走る。なんとも不思議な光景。

車庫では、ちょっとした物販も行われていた。
鉄道で使われていた部品などがあり、おそらくマニアにはたまらない(?)だろう。
先にも書いたように、今回は『応援』に来たので、僕も何かしら買うつもりでいた。
でもきっと、イベントは連休初日から行われていたのでマニア向けのものはすでに無かったのかもしれない。

駅前にはひどい駐車の仕方をしているの車が目立った。周囲は住宅もあるので迷惑だろう。
せっかく銚子電鉄を応援に来る意気込みがあっても、周りに迷惑をかけてはダメだろうに。

車庫で見学中、銚子駅方面から汽笛の音が響いて来た。
きっと今頃SLが銚子駅から出発しているのだろう。

さて、僕もそろそろ移動開始。

外川に向かう列車を待っていると、踏切を緑色の何かが数名のスタッフに支えられながら渡ってくる・・・!

“ケロちゃん”だ!

医薬品などを扱うメーカー、『興和』、コーワという呼び名の方が分かりやすいと思うが、そのマスコットキャラクターが銚子電鉄の一日車掌として応援に来たのだ。

事前にネットでそんな情報は見ていたが、なぜそんなマイナーとは言えないが、微妙な“ゆるキャラ”がやってくるのか、別に特に興味も持てなかったが、踏切を渡ってやってくるシュールな光景を見たら、先ほどまでのイヤな気分も忘れさせてくれた。

電車の中は犬吠駅を目指す客でいっぱい。
ボランティアのアテンダントおばちゃんは今日も元気に観光案内。
駅に飾られている『ボンビー像』を紹介していたが、その元ネタであるゲームソフトの開発元『ハドソン』はもう無い・・・。

犬吠駅に着くと、観光客がどっと降りて行く。そしてケロちゃんも。

だいぶ人の減った車内。

それでも外川駅はいつもよりもたくさんの人の姿があった。
でも、大半は駅舎だけを楽しんで、今やってきた電車にまた乗って犬吠駅に向かっているようだった。


坂を下り、港町を歩く。
千葉科学大学、銚子マリーナを過ぎ、屏風ヶ浦の見える名洗町の海岸へ。



少し早い春の海は穏やかで暖かい。
サーファー達が次の波を待っている。

もう昼なので、駅前のコンビにで買ったサンドイッチと牛乳で昼食。
打ち寄せる波の音と暖かな風に吹かれながらの食事はコンビニサンドイッチの味も美味しくしてくれる。


あれ、いつの間にかサーファーがいなくなってる。波が穏やかすぎたのかな?

ここで横になりながらいつまでも海を眺めていたくなるけれど、そろそろ移動開始だ。

久しぶりに『長崎鼻』の灯台を経由して歩く。

名洗町の海岸と違ってこちらは波が荒い。
サーファーがたくさんいたが、もしかしたらこちらに波を求めて移動して来たのかも。

犬吠埼灯台に向かう前に、もう一つのイベント会場ともなっている犬吠駅に向かう。
駅前広場では、子ども向けにミニSLなどが楽しめるようになっていた。
こんなに人がたくさんいる犬吠駅は初めてみたような気がする。
というより、自分がオフシーズンにばかり来るから人が少ないのだろうけど。

ミニSLなどの中に、ちっこい『デキ3』が・・・!




犬吠埼灯台も今日は人が多い。
人が多くやってくるのは良いのだが、灯台の上は狭いのにどんどん客を入れてしまうから大混雑。
待っているところを追い越して行く家族連れ、周りの状況を全く見ていない人が増えてしまった事に辟易する。

今日はなんだかイヤな気分になりがちだ。

あとで遠くから撮った画像を見てみたら、白いはずの灯台に黒い帯ができていた(笑)

灯台付近のお店は人でいっぱいなので、君ケ浜で缶コーヒーを買って休憩。
『君ケ浜』駅に電車がやって来るタイミングをはかって、移動開始。

今日は会えるかな?ネコの駅長、“きみちゃん”に。
駅長とは言っても別に銚子電鉄公認というわけでもないはずだが、割と有名で車内のアテンダントにも紹介される。
シャレにもならないが、まさに“猫の手も借りたい”とは・・・。

きみちゃんはもう年なのか、ネムネムだ。
連休中はおそらく会いにきた人も結構いたのではないだろうか?

電車がやってきたので、きみちゃんに別れを告げて再び犬吠駅へ。
広場でのイベントは終わっていたが、それでもまだまだ人は多い。
まだ一日休みがある人達は、きっと海沿いのホテルに泊まって明日も銚子を楽しむことだろう。

さて、さきほど降りた電車が外川駅から折り返してきたので、再び乗る。
そして仲ノ町で降りるが、ここから利根川沿いの道まで行くために駅を離れる。


夕暮れの銚子大橋。
今回の旅の終着点。

銚子駅はあれほど人でいっぱいだったのが嘘のように静かになっていた。
SLを見られなかったのは残念だったけれど、満足。
銚子電鉄がまた良い方向へ向かってくれる事を願いながら、帰路についた。

今回イベントで購入したのは、いつもの『ぬれ煎餅』と仲ノ町駅で『さよならひたち号』のプレート。
プレートは思わず銚子電鉄との関係って?と聞いてみたら、別に無く、以前マニアが所有していたものだったそうで、ここで販売、というよりフリーマケットに近い状態だったようだ(笑)
ではなぜこのプレートにしたのかというと、先月昨年11月に福島、昨年10月に日立・高萩に赴いた時に、上野から常磐線の特急『スーパーひたち』にお世話になったから、という理由。

遅めの夕飯は、銚子駅前で呼び止められた海産物系の土産物屋で買ったシラスでシラス丼。炊きあがったご飯にまぜて醤油を少しかけただけだが、ウマイ!
みそ汁はその時にオマケでもらったワカメ。これまた肉厚なワカメで美味しかった。また今度来た時に買って帰ろう。

(了)